ぼうずコンニャクの日本の高級魚事典
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ぼうずコンニャク新境地!? グルメエッセイ也。

更新情報など

最新コラムより

コラム 

イガイに挑んで意外な手強さに苦しむ

八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産で宮城県産だという、「しゅーりがい」を買う。重さをチェックしたクマゴロウの恋女房は、ためらうことなく伝票に「ムールガイ」と書いた。
今や「しゅーりがい」も、「しゅうりがい」も、「いのかい」も、イガイも消滅して、「ムールガイ」になってしまったのだ。
本来、Mulgaï (ムール)はヨーロッパイガイと日本列島でも大繁殖しているムラサキイガイの、ヨーロッパ、アメリカ、カナダの呼び名であって、イガイはイガイなんだけど世間は標準和名イガイすらを抹殺しようとしている。驚くべきは産地の伝票すらムールとなっていることが多い。
簡単にいうと、本来日本列島にいたイガイは、ヨーロッパから来た新参者のムラサキイガイに流通の場で量的に負けており、最近では呼び名すらカッコイイからかも知れないけど、「ムールガイ」にされているのだ。これじゃ、ヤマト王権に抹殺された縄文人じゃねーか。
千葉市で、本来はマイクロシェルという、実に深い奈落のような底を這うような世界の研究家、黒住耐二さんとイガイ属の検索に関して話してきた。
イガイ属の同定はとても難しい。簡単に考えると簡単だけど、自分で検索項目を考えないといけない。
国内海域には本来いなくてサハリンなどからの移入種、キタノムラサキイガイを加えて考えると、余計に難しく脳みそが奈落の底に落ちていくような気がする。
さて、イガイは撮影が終わったら、少量の水分(真水)で蒸し煮にしては貝殻の内側を撮影する。
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料理法・レシピ 

イシダイのかぶと煮、2通りの煮方

神奈川県小田原魚市場、二宮定置にイシダイをわけていただく。ありがとう!
イシダイは時季になると食べ頃サイズ、1.5kgから2㎏の同級生が大きな群れを作って定置網に入ってくる。イシダイは漁の盛期を迎える。
春はイシダイの食い頃、かつ旬なのである。
とまでは何度も述べている。3月半ばのイシダイ料理の続きだ。
市場での立ち話、「最近、カレイ(他の魚でも煮つけ用は)が人気がないのは煮つけを家庭で作らないからだ。店で出すと売れるのに……」から煮つけ方には2通りあるという話をば。
なぜ、煮つけを家庭で作らないんだろう?
失敗しにくい料理だし、歩留まりよく食べられるのに不思議でならない。
たぶん、料理雑誌や料理本がいけないんじゃないかな? 難しそうに書きすぎている。
要は魚など魚介類を液体で熱を通すだけなのだ。
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加工品 

米沢でわざわざ作っている昔ながらの「塩がつお」

福島県から山形県の、太平洋側と日本海側のど真ん中を走る尾根に、比較的大きな盆地がぽつんぽつんとある。そのひとつに米沢市はある。伊達家、上杉家と有力大名が藩主となるくらいなので、稔りがよく、戦国時代には重要な拠点であったはずだ。
この本州東北地方の真ん中に点在する町の産物は非常に面白い。米沢織があり、食べ物では山菜、コイが有名である。東に三陸、西に越後と水産物も東西から送られて来たに違いない。
米沢市には地方公設市場がある。ここにある『かねしめ水産 ケーエスフーズ』で作っているのが「昔ながらのしょっぱい塩がつお」である。
東北地方太平洋側ではとれたカツオに塩をして、山間部に送っていた。その終着点のひとつが米沢であったのだと思う。
ちなみにこの国では長い間、魚介類を生で山間部に送ることは出来なかった。
1925年昭和になり、1950年代高度成長期になってもこの国のコールドチェーン化(生鮮品の保冷しての流通)は進んでいなかった。1960年代になって初めて一般家庭で冷蔵庫が普及し始め、魚介類の水揚げから流通、販売、消費まで通しての保冷・冷凍技術が確立するのは1970年代になってからだという人も少なくない。
当然、三陸ではコールドチェーンが確立するまで、カツオは節加工するか、塩蔵して出荷していたのだ。
この産地から来ていた「塩かつお」の、塩分濃度が年々下がるとともに、入荷量が減ってきた。
そんなとき消費地である米沢で作り始めたのが、この塩分の非常に高い「塩かつお」である。
世の中が減塩減塩と騒ぎ、加工品全体の塩分濃度が下がる中、米沢近郊ではまだまだ塩分濃度の強いものが好まれていた。
このように本来魚介類の産地で作られていた加工品が作られなくなり、消費地で作られるようになる例は少なくない。
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加工品 

めじで伝統食品、「塩まぐろ」を作る

八王子綜合卸売センター、福泉でクロマグロの若い個体である、「めじ」を買った。触った限りは脂はないとみたが、非常に美しい個体で思わず手が出てしまった。念のために鰭の確認をして、体のキズのあるなしを見る。
鮮度がよく、美しいだけではなく完全無欠に近い。我がデータベースは同じ魚でも繰り返し繰り返し、丸々の状態、すなわち形態画像を取り直している。
以上は前回と同じ。
宮城県気仙沼や石巻で「かつおのだぶ漬け(カツオのだぶ漬け)」、「カツオの塩引き」と呼ばれ、関東周辺で「塩がつお」、三重県志摩地方・熊野地方で作られている「塩ぎり」と呼ばれているものがある。
今や絶滅危惧食品であるが、1970年前後くらいまでは日常的な普通の食品であった。東北太平洋側から静岡県くらいまでのカツオの産地で塩蔵処理されて、東北の山間部、東京都をはじめ、関東、東海、紀伊半島の山間部に送られていた。三重県などで作られていたものは、岐阜県などにも送られていた可能性が高い。
この日常的な「塩がつお」を産地で作っていた人、流通させていた人、売っていた魚屋などが寿命を迎えつつあり、記憶が永遠に失われようとしている。
誤解が生まれそうなので、述べておくと、近年、西伊豆で師走になると飾られ、年取に食べる「塩がつお」が有名だが、あれは塩漬けにして干し上げたもので、ハレ(正月、年取)の日のために作るもの。一般的に流通していた、今回の「塩がつお」とは別のものである。
本コラムは、あくまでも日常的に食べられていた「塩がつお」の話だ。
山形県米沢市での聞取でもそうだが、じょじょに海辺でカツオの塩蔵品が作られなくなると、消費地で作られるようになる。またカツオではなく、サバ科のマグロ属やハガツオ属、ソウダガツオ属でも作られ、魚屋の店頭に並び、自家消費されるようになる。
中でもマグロ類は都内でも魚屋などで生食できないものや色変わりしたもの、小型のもので作られていたようである。
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加工品 

徳島の「かつ」に歴史あり

久しぶりに東京都大田市場に行った。
『フーディソン 魚ぽち』でいろいろ見せて頂いていたら、販売している加工品の中に、なんと「かつ」があった。
徳島県小松島市の『津久司蒲鉾』のものである。今や、「フィッシュカツ」というようだが、どうにも、この、こじゃれた名は馴染めない。
カレー風味のついた魚肉にパン粉をつけて揚げたものだ。
島根県の「赤てん」、山口県などで作られている「魚ロッケ」、中国地方・愛媛県などの「がんす」、佐賀県の「ミンチころっけ」などなどと作り方の基本は同じである。
徳島中央市場関連棟で会った老人は1945年の敗戦後、市場に大量に魚肉ソーセージが流通しだしたために、通常の蒲鉾竹輪が急激に売れなくなった。これに対抗するために作られたのが「かつ」だという。
ボクは徳島県美馬郡貞光町(現つるぎ町)の商店街生まれである。ここに乳母車で朝方、食品を売りに来るオバチャンがいて、我が家で必ず買っていたのが「かつ」なのである。
初めて食べたときには幼児で、まだテレビでは「チロリン村とくるみの木」をやっていたはずなので、1960年前後だ。口に入れたら辛くて、泣いた憶えがある。ひりひりをとるために砂糖をなめた。
いつの間にか、このカレー味で、ぴりっと辛く、油でべとべとした「かつ」が食べられるようになり、お昼ご飯のおかずによく食べた。こちらも学校から昼ご飯に戻り、テレビ番組「おはなはん」が始まるまでに食べ終わり、昼休みが終わる1時までに学校に急いだ記憶とともに思い出す。
さて、久しぶりに食べた『津久司蒲鉾』のフィッシュカツがとてもおいしいのは、懐かしさがプラスされているからかも知れない。
ソースも醤油もつけないで、そのまま食べるのが好きだけど、食べ始めると止められない。2パック4枚しか買わなかったことを大いに後悔した。
ちなみに徳島県内では、いくつもの蒲鉾店が「フィッシュカツ」を作っている。それほど違いはないが、いろいろ食べ比べてもいいだろう。
ここだけの話だが、ちょっとだけ寂しいのは、昔食べた、あのべとべとがなくなり、あっさりと胸焼けしない味に変身していることだ。
もう一度だけでいいので、あのべとべとが食べてみたい。
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コラム 

根ボッケの開き干しが超高級であるのは当然だ

3月18日に八王子綜合卸売センター、福泉で買ったホッケは体長48cm・2.07kg なので特大といってもいいだろう。
ホッケは出世魚で、アオボッケ→ロウソクボッケ→ハルボッケ→ネボッケ(根ボッケ)と名前が変わり、値段も成長にともない上昇する。ハルボッケまでは安いが、成魚、ネボッケになると根が急激に上昇し、1㎏を超えると高値がつく。2㎏上は非常に高い。
ちなみにホッケは孵化した稚魚や幼魚は産卵した岩礁域にいて、成長すると沖に出る。また少し成長するとエサの豊富な場所に移動し、成魚になると一定のところに居着く。根ボッケとは成魚で、成長にともなう水域の移動をしない個体のこととなる。ちなみに室蘭での聞取では、非常に大型の個体だけを根ボッケという人もいる。
ちなみに大型のホッケは本州、関東などよりも北海道で人気がある。北海道だけに見られるのが特大開き干しだが、これは東京の人間などからすると、考えも及ばぬ額で売られている。
ちなみに第二次世界大戦の敗戦後、ホッケはまずい魚の代表的なものとされた。カジカに近い魚で、鮮度落ちが比較的早いのに保冷なしの鉄道で消費地に送られ、配給されていたからだ。
今でも500gくらいの鮮度のいいものに、今ひとつ値がつかないのは、この悪評が微かに残っているためだと思っている。この比較的安値安定のホッケは街の魚屋さんにとっては値頃感のある魚だが、味から考えると、全体的にもっと高値がついてもいいと思う。
さて、過去のデータをみると2㎏サイズは残念ながら3個体しか食べていない。ほぼ10年振りの特大は、持った感触が非常に柔らかいのに驚いた。鮮度が悪いための柔らかさではなく、脂が身体全体に回っているために柔らかいのである。
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白子湯豆腐風
コラム 

肌寒い春の深夜の白子鍋で、今季これにて白子終い

一般的に「たら」といったらマダラとスケトウダラの2種のことを指す。両種とも北太平洋の冷たい海域に生息、普段は深海にいる
マダラは非常に大きくなり、全長1m以上20㎏ぜんごになる。
スケトウダラは大きくなっても60cmどまりで1㎏くらいにしかならない。
マダラは雄が高く雌が安い。
スケトウダラは雌が高く、雄が安い。
両種とも産卵前に盛漁期を迎え、マダラは白子が非常に高く、真子が安いからだ。スケトウダラの雌が高いのは真子が「たらこ」で、真子が非常に高いからである。
ちなみにスケトウダラの白子はとてもうまいし、マダラの真子も工夫次第ではおいしいことも明記しておきたい。
数年前、青森県陸奥湾入り口にある牛滝漁港に「入りだら漁(12月に陸奥湾に入ってくるマダラをとる)」を見に行ったが、雄はていねいに1入りの専用箱に入れられるが、雌はいきなりタンクに放り込まれる。だいたい地元の人も「雌は食わないな」、なんて親戚に分ける雄を選んでいたものだ。
さて、やっと本題、今回は白子の話なので、マダラのことになる。
青森県産マダラの白子を八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産で買った。今季は非常に忙しくて驚いたことに、これが遅すぎる初白子であり、終いの白子となる。
しかも買った日は、都心で打ち合わせなどをし、気がついたら深夜2時になっていたことだ。
いつもは塩水で洗い、食べやすい大きさに切り、根元にある皮膜と血管をとるのだけど、今回は塩水で洗ってそのまんま昆布だしに酒・塩の中でことこと煮ながら食べた。
切り分けないで放り込んだので、昆布の上で韓国風焼肉のように調理バサミで切っては食べる、なんて無風流な食べ方になった。
でも口に入れば同じなので許していただきたい。
ちなみに本体よりも、白子の方が流通上では主役というのはマダラだけだ。
それほど白子は味わい深く、舌の上で脆弱に崩れてとろんと甘い。
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料理法・レシピ 

めじの腹もを素揚げにして朝ご飯

八王子綜合卸売センター、福泉でクロマグロの若い個体である、「めじ」を買った。触った限りは脂はないとみたが、非常に美しい個体で思わず手が出てしまったのである。念のために鰭の確認をして、体のキズのあるなしを見る。
鮮度がよく、美しいだけではなく完全無欠に近い。我がデータベースは同じ魚でも繰り返し繰り返し、丸々の状態、すなわち形態画像を取り直している。
だからきれいだとついつい買ってしまう。
撮影するからには、食べるのは翌日になる。
今回の個体は産地を聞き忘れるといった失態をおかしてしまったものの、見事な画像が撮れた。しかも翌日でも刺身で食べることができた。
この「めじ」で12品の料理を作る。熟成を要するものがあるので、現在進行形である。
さて、撮影が午前6時過ぎに終わり、被写体である「めじ」を下ろす。
今回腹部の内臓を包んでいる部分を三角形に切り取る。
材料はこの腹もだけだ。
だいたい午前3時には起きてサイトの運営やメールの返信、前日に撮った画像整理をしているので、午前6時を過ぎると腹が減りすぎてなにも手につかなくなる。
あたふたと短時間で朝ご飯を作る。
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コラム 

フトツノザメの煮つけは煮凝ってから食ってなおウマシ

とある青森県青森市のサメ屋が、「フトツノザメでは煮凝りができない」という。本当か?
前回は水揚げしてその当日に煮つたら、やたらにおいしかったので全部食べてしまって、肝心な煮凝りのことを忘れていた。
サメ屋は日本一のサメ学者らしいので、嘘を言うなんてこたー、ないだろうけど、やってみないことには始まらない。
さて、ツノザメ科で一般的に食用魚として流通しているのは「あぶらざめ(アブラツノザメ)」だけだ。
北海道・東北は当然のこと、東京都、栃木県をはじめ関東全域でも古くから愛されてきた魚で、とてもおいしいので人気が高かった。
それではツノザメ科の他のサメはまずいのか? というとそんなことはない。同じように非常に美味なのである。アブラツノザメが栃木県では祝い事や年取魚(大晦日・正月に食べる魚)として食べられているのは漁獲量が多いためだ。
フトツノザメはアブラツノザメと比べると温かい海域を好み、本州以南に生息している。全長1.3mくらいになるものの、サメの仲間としては小型である。水揚げ量は非常に少なく、食用になると思っていない漁師さんもいるくらいである。
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コラム 

ヤリイカの季節、やっと来たかも?

八王子綜合卸売協同組合、舵丸水産で北海道産ヤリイカを買った。
外套長(胴に見える部分の長さ)34.5cm・330gの雄である。
このサイズくらいからヤリイカの値が跳ね上がる。大型で、魅力的である。
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料理法・レシピ 

春は名残のイシダイの魚すき

神奈川県小田原魚市場、二宮定置にイシダイをわけていただく。ありがとう!
イシダイは時季になると食べ頃サイズ、1.5kgから2㎏の同級生が大きな群れを作って定置網に入ってくる。イシダイは漁の盛期を迎える。
春はイシダイの食い頃、かつ旬なのである。
とまでは何度も述べている。3月半ばのイシダイ料理の続きだ。
さて、三月後半になっても寒暖差が激しく、寒さが温かさに勝る日々、あたりの桜は蕾を一層硬くしている。とても寒くて、深夜などエアコンをつけてしまうことすらある。
この寒さ故に作る鍋もそろそろ最後かなと思う頃となった。
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コラム 

イシダイの中落ちで茶漬けをちゃちゃちゃ

神奈川県小田原魚市場、二宮定置にイシダイをわけていただく。ありがとう!
イシダイは時季になると食べ頃サイズ、1.5kgから2㎏の同級生が大きな群れを作って定置網に入ってくる。イシダイは、今まさに、漁の盛期を迎えている。
春はイシダイの食い頃、かつ旬なのである。
小田原の市場人曰く、3月くらいが味のピークで、じょじょに味は下降気味になるという。個人的には5月くらいまで旬は続くと思っているが、毎日イシダイを見て触っている人間にはもっと微妙な、旬(10日間)の味の違いがわかるのだろう。
さて、脂が乗っているので、三枚に下ろす、その包丁が非常に重い。一気に包丁を引けないので、ときどきべったりついた脂をぬぐっては引く。
そのせいとばかりは言えないが、中骨にたっぷり身がついている。
ついている身を見ながら、不器用も悪くないと独り言つ。
中骨についた身をスプーンでかき出しながらにやけてくる。
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コラム 

3月半ば、小田原魚市場近くの食堂で朝ご飯

神奈川県小田原魚市場、魚市場食堂はとても有名だ。ただ、残念なことに開店時間が遅いので、ほぼ市場人のボクが朝ご飯をとるのは無理だ。
いつも、市場人のための食堂、港のオッカサンのところで、朝ご飯を食べる。
今回は市場人定食(オムレツ)とブリ刺身、フクロフノリのみそ汁だ。
昔は市場人でわいわいと楽しく朝ご飯を食べていたが、最近、みんな忙しくて集えないでいる。
その上、春休みなのか、一般客が朝早くから楽しそうに小上がりを占領しているのである。オッカサン達も忙しくて、おちおち世間話もできない。
小田原魚市場で魚を見るのは重労働だ。だいたい午前4時過ぎに市場に入り、地物をすべて同定し、基本的に全種の撮影をする。同定できないものもあるが、そのようなものは基本的に市場では無価値なので頂いてきたり、先取りしてもらう。持ち帰ってからが非常に大変なのだけど、ここで書いても仕方がない。
ちなみに小田原魚市場場内は吹きさらしで、箱根颪と酒匂川に沿って丹沢から下りてくる冷気で、3月いっぱいは非常に冷える。この沈み込んでくる冷気が体力も気力も奪い尽くす。年のせいかと思ったら若い買受人がそばにきて、「きついっすね」と時候の挨拶代わりにぽつりとつぶやく。
南は真鶴福浦、真鶴岩、江ノ浦、根府川、米神、二宮の地元の定置網があり、平塚、東京湾柴などからも荷(魚自体であり、魚を入れた箱でもある)がやってくる。最後に刺網の水揚げを待って、終了するのが7時前後だ。
市場で右往左往してほぼ3時間、お腹と背中がくっついてクウクウと鳴る。
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